果てしなく広がる蒼い海へと
我が健洋丸を繰り出した時から勝負は始まる。
それは、人生のそれと全くといって良い程似ているものだ。
そこには出逢いがあり、深みに潜む魚達にあれこれと想像を膨らませ、
狙いを定め身体中の全神経が
こんなにも集中出来るものなのかと不思議にさえ想うものだ。
そんな時の釣人の横顔に、
まるで無邪気な少年時代の自分の面影が重なる。
その真剣な瞳の色を見るたびに
船頭と呼ばれる自分に誇りを持つと同時に、
一瞬、一瞬の夢や希望に全魂を込めて、
精一杯応援したい衝動にかられる。
たぶん、己への挑戦でもあるのだろう。
竿先に僅かな反応(アタリ)…。
その瞬間、釣人は胸の鼓動も
かすかに乱れ始め高鳴りを覚える。
息詰まる様なかけひきの末、
海面から姿を現わした魚との出逢い。
まるで100年越しの愛しい恋人にでも再会したような
微笑みと、Victoryという喝采で迎える。